御祝い棒

 小正月の14日、下伊那郡上村上町(現飯田市)において行なわれる御祝い棒は、クルミの若木を削り掛けにして作り、この1年に嫁を迎えた家や祝い事のあった家に子どもたちがお祝いに行く行事である。14日夕方、氏神の正八幡社にほたを燃やしてこもり、15日未明になると、年長の者が手にゴイワイ棒を持ち、太鼓を打ち鳴らしをがら集落を一巡した。これを在方回りといい、2回目からは町中の男の子が加わる。そして3回目になると、前年のこの1年にお祝いのあった家に行き、「まいった、まいった、ゴイワイボウがまいった」とあがりはなで板の間などを削り掛けの棒でたたくのである。お祝いされた家でご祝儀を出すと、次の家へと回っていくのである。予定した家すべてを回り終わると、正八幡杜に引き上げ、拝殿の床をたたいて、ご祝儀を分配してこの行事を終わる。かつてはゴイワイボウは筒粥の神事に使用したという。かつては15日未明に行なわれていたが、現在は祝いごとのあった家の事情もあるのだろう、14日のうちに行事は行なわれている。本来は新婚の家によい子どもが生まれるように、というような意味があったものだろう。

 おこもりをして15日未明のまず一巡目に集落を起こして歩き、三巡目に御祝い棒をして歩くというところは、地域は南と北とまったく異なるが、下水内郡栄村箕作の道祖神祭りと大変よく似ている。

 撮影したのは、平成2年1月14日である。新婚の家を訪れた御祝い棒である。

 

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