山の神

 近江蒲生郡一帯では、年頭に山の神神事が行なわれる。
 永源寺町高野神社では、1月2日の午後4時ころ、神主が内陣での大祓いの祝詞をあげると、内陣より一対の神体を神前に下ろす。男神は松の木の四つ股、女神は桜の木で作られ、ともに80センチほどある。顔にあたる上端に白紙の帽子をかぶせ、胴下に性器が象られている。神主が両神を向かい合わせて近づけ、室人が片口の甘酒を上から注いでたらす。これを「こと始め」の神事というが、まさしく新年の「こと」初めである。


 日野町大屋神社では、1月3日、神社から東に200メートルほどのところにある山の神で神事が行なわれる。村人が路上に一列に並び、神主が祝詞をあげ、社守・総代らが参拝する。社守が三宝の餅を持って森の北東のアキの方角の田の畔へ行き、神主はひとり神社の鳥居まで帰る。やがて社守と神主、村人とのやり取りがはじまる。
 社守「かかりよった」
 村人「エンヤラヤ」
 神主「ワセ、ナカ、オクテ」
 村人「エンヤラヤ」
 神主「今年の作り物皆よかれ」
 村人「エンヤラヤ」
このように三角三方で発生する。「かかりよった」は烏が山の神の餅をくわえたことを意味し、よその烏喰みを示す。神主の声は森からの神託のように聞える。


 蒲生町日野鉄道大塚駅前にある山の神は、1月3日の午前に行なわれる。松の木の根もとに「オタイ」と「メタイ」の一対がまつられていた。このようなオタイ。メタイの双神を作ってまつるところが多い。

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